米ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)は、リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS以下、リーバイス)が擁するカジュアルウエアブランド「ドッカーズ(DOCKERS)」のIP(知的財産)を3億1100万ドル(約447億円)で買収した。なお、取引の完了後、「ドッカーズ」の業績が一定の基準に達した場合には、ABGがリーバイスに追加で8000万ドル(約115億円)を支払うという。
「ドッカーズ」は、リーバイスが1986年に設立。メンズのチノパンツを主力商品とし、当時米国で台頭しつつあった“カジュアルフライデー”など、オフィスウエアのカジュアル化の波に乗って成長した。しかし、他社も参入してきたことから次第に業績が低迷。リーバイスは2004年や21年にも「ドッカーズ」の売却を試みていたと見られるが、いずれも実現しなかった。
現在、「ドッカーズ」は世界50カ国で販売されており、24年度の売上高はおよそ3億1800万ドル(約457億円)。これはリーバイスの売り上げ全体の5%程度にあたる。なお、「ドッカーズ」のナタリー・マクレナン(Natalie MacLennan)社長をはじめとする経営陣の進退については、現時点では明らかになっていない。
リーバイスとABGのCEOのコメント
リーバイスのミシェル・ガス(Michelle Gass)社長兼最高経営責任者(CEO)は、「『ドッカーズ』の売却は、D2Cを優先し、グローバルでの存在感をいっそう高め、ウィメンズやライフスタイル分野に投資していくという当社の事業戦略に沿ったものだ。ABGは『ドッカーズ』の次章における成長を促す最適なパートナーであり、今回の取引では同ブランドの事業価値を最大化することができたと確信している。『ドッカーズ』のグローバルチームの、これまでの貢献に心から感謝している」と語った。なお、同社は今回の取引で得た利益のうち1億ドル(約144億円)程度を自社株買いに充て、株主に還元するという。
ABGのジェイミー・ソルター(Jamie Salter)会長兼CEOは、「『ドッカーズ』は世界的によく知られているブランドであり、オフィスウエアのカジュアル化に貢献した。そのレガシーを土台に、さまざまなカテゴリーで成長する大きな可能性があり、当社のビジネスモデルにぴったりのブランドだ」と述べた。
先に交渉していたマーキーは経済環境を懸念し撤退
今回の買収は2段階に分けて行われ、「ドッカーズ」のIPおよび米国とカナダにおける事業は7月末までに、その他の地域における事業は26年1月末までに取引が完了する予定。ABGは、「ドッカーズ」の米国とカナダにおけるライセンシーとして、長年のパートナーであるセントリック・ブランズ(CENTRIC BRANDS)と契約を締結。同社は商品デザイン、調達、卸などブランドの運営面を担う。南米、欧州、中東、東南アジアなど他市場でのライセンシーについても、ABGのパートナー企業との交渉が進んでいるという。
なお、4月には、米ブランドマネジメント会社マーキー・ブランズ(MARQUEE BRANDS)が「ドッカーズ」の買収についてリーバイスと独占交渉を進めていると複数の海外メディアが報じた。しかし、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領政権による関税の引き上げなど、経済環境の先行き不透明感を懸念材料として撤退。より資金力のある競合のABGが獲得することとなった。
ABGは、10年の設立。50以上のブランドを保有しており、小売ベースでの年商は320億ドル(約4兆6080億円)に上る。主な保有ブランドは、「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」「フォーエバー21(FOREVER 21)」、米「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」「リーボック(REEBOK)」「テッドベーカー(TED BAKER)」「ハンター(HUNTER)」「チャンピオン(CHAMPION)」など。