2010年に誕生したナチュラルアイランドは、妊婦や乳幼児向けの製品を主軸に展開するナチュラルサイエンスの「肌に良い製品を作る」という哲学を受け継ぎつつ、大人が植物の恵みや香りを楽しみながら肌を整えることを目指したスキンケアメーカーだ。研究員たちの「良い水で化粧品を作りたい」という思いが北海道・倶多楽湖の湧水との出合いにつながり、17年から白老町の廃校を再生した拠点「ナチュの森」で丁寧なモノ作りに向き合っている。北海道はいわば“偶然”ともいえるつながりだったが、小松正和社長は「今は何よりも地域と共にある気持ちが強い」と話す。
北海道白老町は、南西エリアに位置し、人口約1万5000人の太平洋と山々に囲まれた地域だ。町内にある倶多楽湖は世界でも珍しい真ん丸なカルデラ湖。外輪山に囲まれているため川が流れ込まず、雪解け水と雨水で構成された純度が高い軟水かつ有機物の少ない良質な水質を誇る。
現地で出合った廃校を活用し、工場、農園、ガーデン、カフェなどを備えた複合施設「ナチュの森」を17年に設立。学校という地域の記憶を受け継ぎ、製造拠点としてだけでなく、人が集う文化拠点として再生した。設計の根底にあるのは「好奇心こそがモノ作りの根幹」という考え。五感を通したクイズで香りについての学びを深める“香りのラボ”や蒸留の仕組みが学べる“蒸留実験室”などで、知的好奇心を育む。「地域の人々の文化的な貢献につなげたい」という同社の思いが「ナチュの森」全体で表現されている。
トレーサビリティーと安全性を重視する同社は、「誰がどんな思いで育てているか」を大切に“顔が見える”素材調達を行っている。自社農園に加え、希少な素材であるセントジョーンズワートや和ハッカは生産者と相互理解を深めた上で契約。長期的な関係を重視する姿勢と自分たちが選んだ素材への信頼から、創業当初から15年以上続く取引先も多い。たとえ1つの製品が売れなくても、原料は別の製品に活用するなど関係を持続する努力を惜しまない。農家の厳しさを胸に素材と真摯に向き合う姿勢が、地域農業との継続的な取引や経済への還元にもつながっている。
拠点を北海道白老町に置いた理由に体現されている通り、化粧品作りの全ての過程で良い素材を追求する姿勢を貫いている。自社農園で栽培するカレンデュラは収穫後に花びらを1枚ずつ手で選別するなど、「効率よりも丁寧さ」を重視している。小松社長は「1つの植物といえど、花、葉、枝、根で香りも成分も効能もまったく異なる。効率的とはいえないかもしれないが、こうした作業こそが弊社のモノ作りの根幹」と話す。自然への敬意を込めて素材を扱い、製品の質と安全性を高めることで、顧客に伝わるクオリティーを生み出す。
オーガニックへのこだわりと科学的証明の両立を目指し、部位や抽出法による違いを検証しながら肌への有効性を学術的に裏付けている。ナチュラルサイエンスの研究体制を活用し、年単位・高コストの研究にも取り組む。たとえば、白老町・虎杖浜に自生する「オオイタドリ」は、長年雑草として見過ごされていたが、「旺盛な繁殖力に理由があるはず」と大学との共同研究を開始。7年以上かけて、エキスに頭皮や髪のハリ・コシを高める効果があることを実証し、ヘアケア関連の製品化につなげた。自然を科学で深掘りする姿勢がブランドの革新性を支える。
栽培の過程から植物と向き合って化粧品へと仕立てる同社にとって、“生活を豊かにする力”を持つ香りは重要な要素だ。スキンケアや入浴の時間にリラックスをもたらす香りで、大人が使う時間そのものを楽しめる製品を目指している。また、「ナチュの森」では、香りの魅力を五感で体験できる施設も展開。エステ施設「アクアサロン」では自社製の有機ハーブオイルを使ったトリートメントや湧水スパで癒やしを与える。「森の工舎」内には“香りのラボ”や“香りの図書室”を設置し、香りの文化を伝える学びも提供する。
ナチュラルアイランド
011-615-7153