5月18日、「第78回カンヌ国際映画祭」で「ウーマン・イン・モーション」アワードが開催され、ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)が同アワードを受賞した。
ケリングが主催する「ウーマン・イン・モーション」プログラムは、映画やアート業界に貢献する女性に光を当て、業界内の男女平等を推進することを目的としており、同アワードでは業界にインスピレーションを与えた人物や新たな女性の才能を表彰している。
今年は、トークに日本人として初めて映画監督の是枝裕和と早川千絵が登壇し、映画業界における女性活躍などについて意見を交わした。
3年前から同プロジェクトに携わる是枝は、「僕はずっと女性に支えられながら映画を撮ってきたので、恩返しのつもりでここに来ています」とコメント。
今年、自身が監督した「ルノワール」がオフィシャル・コンペティション部門に選出された早川は、日本で女性が映画監督になることは困難に感じるかと聞かれると、「今の日本において、映画監督になることは難しくなくなっているのではないかと思っています。女性の監督がたくさん生まれてきて、どんどん活躍しています。すごく喜ばしいことですが、私の20代の頃とは全く様相が違っています。私はずっと映画監督になりたかったのですが、今でも覚えているのですが、まだティーンエイジャーとかの時に、周りの人たちに今考えるとすごくバカな質問をしていたんですね。“女性でも映画監督ってなれますか”って。それぐらい現実味がなかったというか、女性監督のロールモデルというのがあまりいなくて、それが一番最初に不安に思ったことでした。女でも監督になれるんだろうか、という不安がずっとあったのですが、今の若い世代の監督は全くそういうふうに感じていないのではないかなと思います。それぐらい変わってきていると思います」と語った。
また是枝は、日本で女性が映画業界で働くための支援策はとられていると感じると答えたものの、「僕の事務所の女性スタッフの8割が女性なのは、女性の活躍を支援するためにと考えていたというよりは、僕があまり男性と上手く仕事がスムーズにできなくて、女性の方が非常にやりやすいという僕の問題から生じた結果。すごく意識的にされていると思われてしまうと、ちょっとどこかむずかゆくなるところはある。ただ、今は僕の撮影の現場は、おそらく6割は女性だと思います。現場の雰囲気とか意識の持ち方というのは、割合が変わるだけでもかなり変わってきていると思っています」と率直に答えた。
また、トークにはニコール・キッドマンも登場した。キッドマンは、「制限されたり、安全な場所に留まったりしたくありません。常に限界に挑戦し続けること、それが私の目指すところです。若い映画監督たちが“一緒に実験しようよ”と言っているのも、まさにその通りだと思います。今の時代、クリエイティブな仕事では、自由に実験することが求められます。厳しい評価を受けることもありますが、批判や批判を受け入れ、それでも前進し続ける覚悟が必要です」と今後も意欲的に活動する意思を示した。
なおディナーには、過去に「ウーマン・イン・モーション」エマージング・タレント・アワードを受賞した7人の映画監督のほか、フランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)=ケリング副CEOや、イリス・ノブロック(Iris Knobloch)=「カンヌ国際映画祭」会長らが来場した。