ファッション

日本でどうなる合成ダイヤモンド市場 「エネイ」の事業課長に聞くラボグロウン市場の現状と行方

デビアスによるラボグロウンダイヤモンド(合成ダイヤモンド、以下、ラボグロウン)ジュエリー「ライトボックス(LIGHTBOX)」が終了する。同ブランドは2018年に創業。当初1カラット800ドル(約11万円)という価格設定をしていたが、ラボグロウンの価格が急落したため、継続できない状況だ。日本市場で販売していないが、日本でもここ数年ラボグロウンを使用したジュエリーが増えている。日本におけるラボグロウンの現状について、ラボグロウンジュエリーを展開する「エネイ(ENEY)」に取材した。

21年に誕生したジュエリーブランド「エネイ」は、日本でいち早くラボグロウンを使用したジュエリーを提案。ファッション感度の高いスタイリストなどから支持が高いブランドで、年々、売り上げを伸ばしている。同ブランドを手掛ける松屋銀座の島田成一郎 事業推進部スタートアップ事業課 課長は、「創業時から3年連続で売上高4割増、直近で3割増と好調だ」と話す。デビュー当時からラボグロウンを使用したジュエリーを多く販売しているが、ファンの多くはラボグロウンというよりはデザインを入り口に購入していく。「ブランド立ち上げ当時はラボグロウンの知名度は低かったが、今はジュエリーを着用する人はほとんど知っており、ネガティブな印象は全くない」と島田課長。

1カラット以上が下落、日本市場に影響はほぼない

「エネイ」では、ラボグロウンを中国やインドから調達している。島田課長は、「ラボグロウンの需要が増えるにつれ、企業も増えて増産できるようになった。グローバル相場があり、業者向けのポータルサイトも存在する」と話す。「ライトボックス」のブランド終了の影響につい同課長は、「日本市場には、ほぼ影響がない」と言う。というのも、日本市場で使用されているラボグロウンの多くは、1ct未満。メレ(0.1ct以下)となるとサイズが小さく研磨に手間がかかるため、天然とラボグロウンの市場価格はほぼ変わらないという。「米市場のダイヤモンド主要市場は、1ct以上。1ct以上のラボグロウンの価格が下落し、4年前の約3分1程度になった。天然ダイヤモンドの価格も連動して少し下がっている」と同課長。実際のところ、天然とラボグロウンで大きな価格差が出るのは現在、0.3ct以上だという。

エンゲージの選択肢としての可能性

「エネイ」では、24年9月にラボダイヤモンドの原石を使用したコレクションを販売したところ、非常に好評だったという。1〜4ctまで内包物がある合成ダイヤモンドに10金を組み合わせたリングとして販売。島田課長は、「敢えて天然石らしいものを出すことで、ラボグロウンのグレードもいろいろあることを知ってもらいたいと思った」と話す。

ここ最近では、合成ダイヤモンドを使用したエンゲージメントリングが好調だという。よく動くのは、0.5ctのラボグロウンに18金やプラチナを合わせたもので価格は32万円程度だ。「ファッション好きから知られているブランドだが、エンゲージについてもデザインと石、価格のバランスで選ぶ若い人が増えている」と島田課長。地方からの来店もあり、週末成約が多いという。「エネイ」では、今後も引き続きブライダル強化を図っていくという。

天然と違う市場として拡大する中で必要なのはブランド力

エンゲージ強化に加え、大きいラボグロウンを使ったコレクションも出す予定だ。「プラチナや18金を使用したものからシルバーを使用した一般的に手に取りやすい価格帯のものまで提案したい」。石が大きいため、リングが中心になるがピアスなど耳まわりのジュエリーも想定している。「大きいサイズの価格が下がったため、新しい提案ができるし、ポジティブな動きだと考える」。

一般消費者にとって高嶺の花だった大きいサイズのダイヤモンドがラボグロウンであれば購入できるようになる。「ここ数年でAIが登場して世界が急速に変化している。人々はその変化に慣れてきて、ラボグロウンもAIと同じような感覚で捉えている。天然と同じ素性で安く楽しめるのなら、否定する必要はない」。今後、日本でもラボグロウン市場はさらに盛り上がり、広がると島田課長は予測する。「新たな選択肢としてラボグロウンを使用したブランドが増えるだろうし、天然とは別の市場として定着していくと思う」。その中で求められるのは、ブランド力だと言うのが同課長の意見だ。「素材自体の価値、デザインなど消費者の価値観が多様化する中で、選んでもらうためには、説得力のあるブランド力が必要とされるだろう」。

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