ファッション
連載 齊藤孝浩の業界のミカタ 第74回

“ハグレモノをツワモノに”のyutoriに学ぶ、次世代ブランド育成戦略

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決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目をつけ、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はyutoriの決算からアパレル企業の新しいビジネスモデルを探る。(この記事は「WWDJAPAN」2025年6月9日号からの抜粋です)

今回は今、業界で最も勢いがある新進企業のひとつ、yutoriの決算書を読み解きます。

インスタグラムで「古着女子」を展開していた片石貴展さんが2018年4月に設立し、自社ブランド「9090」をスタートするところから同社の歴史が始まります。ミッションは“ハグレモノをツワモノに”。25年3月期末段階で年商83億円規模ながら、SNSのインフルエンサーコミュニティーに支持されるマイクロブランド38を展開。70ブランド運営を目指すとしています。

かつて日本のアパレルビジネスは、20億〜30億円規模のブランドを作り、その中から全国展開の100億円超規模に育て、企業の柱にして行くアダストリアのようなやり方が王道でした。

最近は、市場も多様化し、パルやマークスタイラーのようにディレクターを中心に20億〜30億円規模のブランドをいくつも作って、マーケットトレンドとブランドライフサイクルの旬をとらえながら、ブランドを入れ替えつつ、企業として大きくなっていく企業運営が主流です。

yutoriを見ていると、SNSでインフルエンサーへの共感とともに成長するオンラインビジネスが主流の時代には、もっと小さい個性やコミュニティーを捉える、数億円規模のブランドをたくさん作る時代になって行くのだな、と感じます。

yutoriのビジネスモデルのキーワードはZ世代向け、インフルエンサーによるSNSマーケティングを活用したDtoC。「9090」で、そのポテンシャルが評価され、ZOZOとの業務提携を勝ち取ったことが転機です。ZOZOからは、資金だけでなく、リソースも得ながら、波に乗って行くのがよく分かります。ZOZOの澤田宏太郎社長と片石社長が当時を振り返る動画を見ましたが、ZOZOの中だとブランドを作る話をしても最多年齢層である30代が中心になってしまい、なかなかZ世代が対象にならない中、yutoriのチームに、ZOZO創業時の活力に通じるものを感じて提携を決めたそうです。ここまでの同社の勢いは、片石社長が発するエネルギーが呼び寄せた、出会いに尽きますね。

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