WWDJAPAN.comは4月までマンガ版「ザ・ゴールシリーズ 在庫管理の魔術」を連載していました。在庫過剰に陥ると、つい値下げセールに頼ってしまう――。しかし、本当にそれしか方法はないのか? 利益を高め、最大化するための解決策を、アパレル在庫最適化コンサルで「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」等の著者である齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、同マンガを読みながら、解説して行きます。今回は、第9話を取り上げます。
色で“見える化”された在庫状況が、現場を動かす
今回のテーマは「直感的で成果が出せる!チームを動かす在庫情報共有の秘訣」です。
マンガ「在庫管理の魔術」の第9話は コチラ 。
前回の最後で、主人公の徹が店長を務める渋谷店は、商品の在庫状況を数字ではなく、色で識別できるように可視化することに取り組みました。
基準在庫である20日分の在庫に対して、現在庫が3分の1を下回ったら「赤」、3分の1から3分の2は「黄」、3分の2以上なら「緑」といった具合です。「赤」になったら、予想よりも売れ行きが良いから欠品にならないように基準在庫量を上げて多めに補充発注(積み増し)する。「黄」は予想通りに売れているから基準在庫量はそのまま。「緑」は予想よりも売れ行きが悪いので過剰在庫にならないように基準在庫量を下げて、少し売れたとしても補充発注を控えるといった在庫管理方法です。
主人公の元上司は、基準在庫を売れ行きに応じて自動的に上げ下げする、この管理方法を「ダイナミック・ターゲット・マネジメント(DTM)」と名付けました。
在庫状況を数字で見るよりも、色で示す、つまりビジュアル化することは、誰でも直感的に気づきを得ることができ、すぐに行動に移せるので、短期で成果が見込めます。
読者の皆さんも、会議で数字が羅列された資料を出されて、理解するのに苦労した経験があるでしょう。もし、それらの数字が信号機のように3色くらいで色分けされていれば、緊急度や優先順位を一目で確認できるでしょう。取り扱いSKU数が多ければなおさらです。筆者のコンサル先でも、表計算ソフトを駆使してデータを色分けし、判断基準にすることで、意思決定のスピードを高めているアパレル事業者もあります。
こうした色付けによる可視化の効果は、担当者本人だけに役立つものではありません。倉庫や取引先など、サプライチェーンの上流側の人たちと共有すれば、彼らも温度差少なく店頭の状況をすぐに理解できるようになりますし、次にどんな仕事を頼まれそうか予測ができるようになり、先回りして仕事の準備をするようなこともできるようになります。
仕事のモチベーションの向上にもつながる
併せて、サプライチェーンの上流の人たちが、自分たちがやった仕事が、店頭でどのように役に立っているのかを知ることは、仕事のモチベーションの向上にもつながります。
今回のストーリーの1ページ目で、地域倉庫のマネジャーである元上司は「(倉庫にも共有してくれれば)店頭の売り
上げが見えて現場のモチベーションも上がる」と語っていますね。
上流の人たちは自分の行動がどれだけ業績に貢献しているかが把握しにくいので、自分たちが作ったものの売れ行きが良ければモチベーションの向上につながるのです。誰だって役に立ちたいと思って仕事をしていますからね。
売り上げや売れ筋商品など業績に関する情報は競合企業に知られたくない、外に出したくないと思う企業も少なくありません。しかし、精緻な数値の開示まではしなくても、情報として共有することで、関係者全員とウィン・ウィンの関係を築けるのです。
売上情報が工場を動かす時代
日本の某大手SPAも、店頭の個々の商品の売れ行き情報を、それらを製造している工場にリアルタイムで伝え、追加生産に備えさせていることで知られています。工場もただ言われた仕事をするだけでなく、自ら優先順位を決めて取り組むことで、店頭での売り上げに貢献している実感が得られることができるというわけです。
みなさんの会社やお取引先ではどのように情報共有をされていますか?