「ディオール(DIOR)」は、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)=ウィメンズ・アーティスティック・ディレクターの退任を発表した。2016年から約9年間、メゾン初の女性クチュリエとしてオートクチュールからウィメンズのプレタポルテやアクセサリーまでを統括。27日に故郷のイタリア・ローマで発表したオートクチュールのルックも含む26年クルーズ・コレクションが、彼女の手掛けるラストコレクションになった。後任は未定だが、4月に同ブランドのメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任したジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)がウィメンズも率いることになるのではないかという噂が広がっている。
退任に際し、キウリは「9年の月日を経て、私は『ディオール』を去りますが、このような素晴らしい機会を与えられたことをうれしく思っています。私を信頼してくださったアルノー氏(ベルナール・アルノーLVMH会長兼CEO)と、支えてくれたデルフィーヌ(・アルノー=クリスチャン ディオール クチュール会長兼CEO)に感謝します。特に、私のチームとアトリエが成し遂げてくれた仕事に感謝しています。彼女たちの才能と専門知識のおかげで、世代をまたぐ女性アーティストたちとの親密な対話のなかで、女性のファッションにコミットするという私のビジョンを実現することができました。私たちは共に印象的な章を書き上げ、それを私は大変誇りに思っています」と述べた。
数々のヒットアイテムを生み出した9年間
1964年イタリア・ローマで生まれたキウリは、ヨーロッパ・デザイン学院(Istituto Europeo di Design、IED)のローマ校で学んだ。「フェンディ(FENDI)」で経験を積んだ後、99年に当時から一緒に働いていたピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli、次期「バレンシアガ(BALENCIAGA)」クリエイティブ・ディレクター)と共に「ヴァレンティノ(VALENTINO)」に移籍。二人でアクセサリーデザインを手掛けた後、創業者の引退に伴い2008年にはクリエイティブ・ディレクターに昇格し、キウリが「ディオール」に移るまで長年にわたりタッグを組んでコレクションを手掛けてきた。
また「ディオール」では、フェミニストとしての視点と女性アーティストや職人との協業、そしてムッシュ・ディオールのみならず歴代デザイナーの仕事からのインスピレーションを生かしながらクリエイションに取り組み、マスキュリンな力強さと繊細でロマンチックなイメージを織り交ぜたコレクションを発表。“ブックトート”や復刻した“サドルバッグ”、リボンを用いた“ジャディオール”スリングバックパンプス、星座モチーフやラッキーチャームをあしらったファッションジュエリーなど数々のヒットアイテムを生み出し、ビジネスの発展に大きく貢献した。彼女の在任期間に「ディオール」の売上高は3倍に伸長したという。
業界関係者によると、キウリは「フェンディ」と交渉しているというが、彼女の次の動向はまだ明らかになっていない。